不意に大きな声で呼ばれ、驚いて振り向いた。ここを管理しているのだろうか、ふたりほど人がやって来て彼と話し始めたんだ。少し険悪な雰囲気、どうやら私がここの写真を撮ったことに問題があるようだ。だけどガイドの彼は強い調子で「写真を消す必要はない」と私に断言した。彼は彼らに幾らかのお金を払うと、彼らは物言いたげな感じでこちらを見つつどこかへ消えていった。少し不思議な光景だったけど、今思うと彼は、強引にでも私たちをそこに連れて行きたかったのかも知れない。彼が観光というものを通してホントに伝えたいものが、そこにあったのだ。
内戦が終結して以来未だに、モザンビークは世界の最貧国のひとつに入っているという話…国としてはけっこう厳しい状態だよね、今は平和になったと言ってもさ。これからみんなで頑張って行こうっていうそんな時期なのかも。そう言われてみれば街を歩いている時、少し荒削りな感じの風景も所々あったような気がする。復興はきっとスローペースで進みつつあるんだろうね。
次の日もまた街を歩いた。昨日ぐるりとまわった街を通り抜けると、突然大きなショッピングモールが目の前に現れた。その建物は、港近くの街並みとは明らかに雰囲気を違えてそこに佇んでいる。とにかく裕福層と観光客目当てに作られた施設のようだ。ここマプトでは、貧富の差がモロに表に出ているという話だけど、それを象徴するかのようなものを目の当たりにして一瞬何も言えなかった。内戦が終わって少しの間でも貧富の差はすでに大きく開いている。これって、資本主義経済ならではの風景なのかな。
ショッピングモールをまわりながら考える。きっとどこでもそうなんだろうね、格差があるのはさ。ただ、見慣れてしまってもう何も分からなくなってる自分がいるんだ。かたや高級ブティックの入ったビル、その隣には露天商の並び。普通に見えるその光景も、よく考えればそういうことなんだろうね。いつの頃から当たり前に思ってたんだろうか。
モザンビークの訪問は、自分自身にいろんな問いかけのある旅となった。