道を歩いていると、またもや楽しげなお誘いが。今度は上から「こっち、こっち」と呼ぶ声が聞こえてくる。見上げると男性ふたりがこちらに手を振って、上においでと手招きしているよ。どうやら賑わうカフェの二階の窓から覗いているらしくって、その様子があまりに面白かったからちょっと階段のぼって行ってみたんだ。
ふたりのうち、ひとりは片言の日本語を話せてさ。どうやら私たちの船の現地関係者らしく、まあまあ、ここに座りなさいと言われるがままに座ってみた。そして色々と楽しくお喋りしている内に何故か、話の流れでまたもやバイク乗り場に連れて行かれた私。そうして再び、連れられるままにマーレ2周目バイクの旅が始まったのであった。なんじゃそりゃ。今度は最後にお兄さんのお店に行くというオチはなかったにせよ、モルディブ人はナンパにバイクを使うということがよく分かった一日だった。
そうそれで、このバイクツーリングなんだけど。観光の仕方も色々だよね、モルディブは比較的安全だし昼間だし…と思ったけど、たまたまいい人だったから良かったものの、少し気は付けないとね。危ないと初めから分かっているような所では特に、安易に人についていくようなことは絶対にやらない方がいい。これはどこでも共通して言えることかな、日本でもそうだし。
と、ちょっと気が引き締まったところで。結果、楽しかったバイクツーリングなんだけどさ。ベトナムとモルディブでの大きな違いは、ベトナムはヘルメット有りで、モルディブはノーヘルだったこと。以前同じ船旅でベトナムに寄ったことのある人の話によると、前はベトナムもノーヘルだったみたい。少し経った今、どうやらルールが少し変わったようでさ。同じ寄港地でもやっぱり行く度に街が発展してたりするんだね、当たり前ではあるんだけども。今だって工事中の場所や作りかけのお店がいっぱいある。たった一年後にはもう知らない景色が広がっていたりするんだろうな。特にマーレはあちこち工事しすぎなイメージが否めない。一気にガラリと変わっちゃうはず、このままいくと。
その土地のそのままの良さって、いつまで見ることができるんだろうって思う。自分たちの土地が元来持っている素晴らしさを知っていて、それを生かした発展の仕方をしている場所は少ないかもしれない。みんなどこかの国の何かに憧れて、ひたすら同じになろうと真似をしている。色んな良さを取り入れるのは素敵なことだけど、それだけになってしまって自分のカラーが消えてしまうのは悲しい。「らしさ」がどこにもなくなると、自分が帰るべき場所も分からなくなっちゃうよね。それでなくてもモルディブは、帰る場所がなくなる可能性もあるというのに…(※)
これはホントに「発展」の課題。ちゃんと柱を持っていないと、外側は発展してるように見えても、内側はどんどん退化してただの張りぼてになってしまう。荒削りに急成長している街を見ているといつも問いかけてみたくなるんだ。本当にこの発展は「幸せに向かっているの?」と。
人で賑わう原色鮮やかなマーケットの向こうに、透明に透き通る海が果てしなく広がっている、美しい島モルディブ。ここにある、ここにしかないものをどうか忘れないで…島が未来いつまでも存続し、純粋な祈りの心と共にありますように。
(※)地球温暖化が進む現在、世界でも平均海抜が低いモルディブは、海水面が1m上昇するだけでも島すべてが海に沈み人が住めなくなると言われている。