そんな風に賑わう漁港でお兄さんがふたり、さっきから釣り船の天井に登って何かやっている。ちょっと不可解な行動というか、立ったり座ったりを繰り返してて、何をやってるんだろうってじっと凝視してみると…どうやらちょうどイスラム教のお祈りの時間らしくてさ。他の船の上でも、よく見るとみんな同じ方向に向かって礼拝している姿があった。発展が進み急激に変わりつつあるマーレでは、お祈りの時間になっても閉まらない店が増えていたり、昼間から食堂やマーケットで女性を見かけるようになるなど、その信仰や生活スタイルなどもが大きく変わってきているんだって。そんな変化している時代の中でもこうやって、今でもお祈りを大切にしている姿があったことはとても印象的だった。
街中で人々がバスを待っている姿もね、みんなでキュッとくっついて仲良くベンチに座ってたりしてさ。そんなおじさんたちを見ていているとほっこりする。大人になってからでも、どこかこどもの頃のままの純粋な距離感なんだなぁって。敬虔なイスラムの教えの中で生きている彼ら…もしくは宗教が生活の中で人々の心を繋げ、どこか許し合いながら隣との壁をなくしているのかも知れない。そういう風に思って目の前にある風景を眺めていると、宗教を争いの元とするのも平和の架け橋とするのも、要はそれとの付き合い方ひとつなんだろうなってそう感じるんだ。
ちょっと面白かったのが、街中にあった小さな公園。公園内のあちこちの木の花が満開に咲いていると思いきや、近づいてみるとなんと全部、造花!なんでわざわざ?それもプラスチックやビニール素材でできたような仰々しい造花でさ。ショッキングピンクの花もあって色も凄い。よく見ると、花の真ん中に小さな電球のようなものが付いているよ。もしかしてこれって、夜には光るってやつですか?うわぁ気になる!満開の造花のライトアップ…う~ん毒々しそう。
しかし何で造花なんだろうね、巨大なバニヤンツリーの大木があちこちにあるような恵まれた自然環境の中、何であえてこんな風なことをしてみようと思ったのかが不思議。公園内は結構人がいっぱいでどうやら人気のスポットらしい。イスラム系の、頭にショールを巻いた女性たちがこどもをここで遊ばせているようだ。とにかくビジュアル的にも色々と、かなりインパクト大な場所だわ。
だけどもしかすると、ここのホントの面白さは夜にならないと分からないのかも知れない。夜の公園…生めかしく呼吸する巨木たちと、チープ感がある満開の造花のライトアップとが混じり合う、どこか作為的に作り出されたアート的異空間。ある意味そんな場所でしか味わえない独特な世界が繰り広げられているのかも。だとすれば、夜のライトアップも見てみたかったなぁ…残念。