ピースボートデッキ > COLUMN > 世界一周で知った教育~水先案内人から学んだ、子どもとの関わり方~【ピースボートの旅ブログ】
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レポート
REPORT Vol.045
2017/09/06
世界一周で知った教育~水先案内人から学んだ、子どもとの関わり方~【ピースボートの旅ブログ】

 

ピースボート第94回クルーズは、北欧を周りながら地球一周する105日間の船旅。「ピースボートの旅ブログ」では、世界一周団体TABIPPOとピースボートのコラボ船上プログラム「TRAVELERS BOAT」のメンバーが、寄港地や船旅の様子を感じたままにお伝えします。
今回ピースボートの旅ブログを更新してくれたのは、栃木県出身で、今年の3月に大学を卒業したばかりの「こりさ」こと白石りささん(22)。
幼い頃から子どもとかかわる仕事に就きたいとの思いがあり、大学では幼児教育を学んでいたりささん。
海外の教育にも興味があり、デンマークの教育機関の視察に行った際には、日本とデンマークの教育の違いに驚いたという。
もっとたくさんの国の子どもたちや異なる価値観の人たちと出会い、自分自身の子ども観を深め視野を広げたいと思っていた彼女がタイミングよく知ったのが世界一周の船、ピースボート。ピースボートは船内に保育園があり、世界各国の子どもたちと関わる機会も得ることができると知り乗船を決めました。

そんな彼女は、この船旅で「教育」についてどんな気づきがあったのでしょうか?

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幼いころからの夢であった子どもにかかわる仕事に就くために、大学では幼児教育を学んでいた。学ぶにつれて「大人の都合やルールによって、子どもたちの生きる力や自由が奪われているのでは?」との思いが強くなってきた私は、次第に海外の保育を見てみたいと考えるようになった。
実際に、デンマークの幼稚園・保育園を廻るスタディーツアーに行き、デンマークの、「子どもを一人の人間として尊重する」という考えが根付いている教育を目の当たりにした。それ以来、もっと様々な教育について学びたいと思っていた私が偶然にも出会ったのが、船の中で、主に海外で行われているモンテッソーリ教育を取り入れた保育園、「子どもの家」があるピースボートだった。
しかも、水先案内人として、国際モンテッソーリ協会公認教師であり、一般社団法人「AMI友の会NIPPON」の副代表でもある深津高子さんが乗船されることを知り、乗船前からとても楽しみにしていた。
そして今回、最も会えるのを楽しみにしていた深津高子さんに、インタビューをお願いした。

難民キャンプで出会った言葉、「平和は子どもからはじまる」

現在、フリーの保育アドバイザーとして子どもの発達を考慮した幼稚園・保育園作りや、モンテッソーリ教師養成コース・講演会の通訳、モンテッソーリ著書の翻訳をするなど、まさに日本のモンテッソーリ教育の中心人物である高子さんに、モンテッソーリ教育に出会ったきっかけを聞いてみた。
大阪で生まれ育った高子さんは、15歳の時に家族と共にニューヨークに渡った。ニューヨークの、ネオンが光り輝くきらびやかな世界と出会うと同時に、「世界中がこんなに恵まれているはずがない」という思いが芽生え始めたという。
そんな思いから、大学卒業後は今まで住んでいた世界とは真逆のタイ国境地帯のインドシナ難民キャンプで救援活動を始めることにした。
そんな中で、偶然にも足を運んだキャンプ内にあったモンテッソーリ教育を取り入れた保育園で、「平和は子どもからはじまる」という、後に高子さんのターニングポイントとなる言葉と出会う。高子さん自身、この言葉の意味が初めは分からなかったそうだ。しかし、この言葉との出会いをきっかけに、帰国後モンテッソーリ教育を本格的に学び、保育の道へ進むこととなった。

体感した「平和は子どもからはじまる」

高子さんが「平和は子どもからはじまる」という言葉の意味を理解したのは、モンテッソーリ教師としての仕事をしてからだという。

モンテッソーリ教育では、一般的によく見られる従来の保育園と違い、異なった年齢の子どもたちを同じ空間で一緒に保育する。
子どもたちが、それぞれ興味のあることを取り組むことのできる環境があり、子どもの発達を邪魔しないという観点から、先生は必要以上に手助けはしない。
そんな保育環境の中で、困っている幼い子どもを、年上の子どもが手伝ったり、好きな活動をめいめいが無我夢中に取り組む光景を目にしたとき、高子さんは「これか!平和は子どもから始まるとは!」と、ブルブルとするような感覚を味わったという。そこには、”This is the Peace.”というような、子どもたちが助け合う平和なクラスができていたのだ。

子どもと関わるときに大切にしていること

モンテッソーリ教育では、「子どもを球根と捉え、生まれた時から一人一人のプログラムはできており、そのプログラムが健全に発達するよう、邪魔をしないようにする」という考え方をする。従来の「子どもは空っぽで生まれてくるため、たくさんのことを詰め込んで満たしてあげる」という一般的な子どもの捉え方とは異なるものである。

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そんなモンテッソーリ教育を広めるために活躍をされている高子さんに、子どもと関わるときに大切にしていることを聞くと、こんな答えが返ってきた。

「子どもを尊重し、いつも子どもから学び続けるという謙虚な心を持つこと」

大人は環境を整え、子どもの発達に合わせて適切な援助はするが、子どもの「自立したい」「自分でやりたい」という気持ちを大切にし、子どもの発達や命の邪魔はしないようにすることが、子どもにとって最善なのだそうだ。

また、高子さんが一番大事にしていることとして、もう一つ答えが返ってきた。

「子どもに好かれるために保育をしないこと」

高子さん自身、子どもに対して自分を好きになってほしいという願いは一切ないという。
自分の気持ちを満たすためや、自分のことを求めてもらいたいがために子どもとかかわることは、とても自己中心的な考えであり、子どもにとって迷惑なこと。

子どもは良いことも悪いことも、すべて吸収してしまうが故に、動きも言葉も丁寧に接する必要があるのだ。

振り返った自分の子ども観

高子さんの話の中には心に留めておきたい言葉がたくさんあった。その中でも特に心に残った言葉が2つある。
1つ目は、「子どもに好かれようと思って保育をしない」という言葉。
子どもに愛されることを求めれば求めるほど、大人中心の保育になりかねない。保育者は環境の一部であり、主役は子どもなのだと、改めて再確認することができた。

2つ目は、高子さんのターニングポイントともなった「平和は子どもから始まる」という言葉だ。
世界には、戦争や貧困、環境問題など様々な問題がある。その問題をさかのぼってみると、教育にいきつくことも少なくない。特に幼児教育は、教育の中でも最も大切だと、高子さんとのお話を通して改めて思う。

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子どもの心の平和の種を育てると、子どもが変わり、親が変わり、そして社会が変わる。平和の輪がどんどん広がっていく。やはり、平和は子どもから始まるのではないだろうか。
この言葉は、幼児教育にかかわる人に限らず、すべての人に知ってほしいと思う。このことを意識して子どもとかかわるだけでも、きっと社会は変わっていく。
私も、平和の種をたくさん育てることが出来るよう、これからさらに学びを深めていきたい。

今回はこのような貴重なインタビューの機会をいただき、本当にありがとうございました。深津高子さんをはじめ、協力してくださった方々に深く感謝いたします。

(取材・文/白石りさ 写真提供・編集/原田ゆみ)
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