ピースボートデッキ > COLUMN > 【リアルパッセンジャーレポート】ジャグリングの世界チャンピオンからもらった忘れたくない言葉たち
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レポート
REPORT Vol.003
2016/10/07
【リアルパッセンジャーレポート】ジャグリングの世界チャンピオンからもらった忘れたくない言葉たち

 

現在アイスランドへ向けて航行中の第92回クルーズからはじまった、世界一周団体TABIPPOとピースボートのコラボ船上プログラム「TRAVELERS BOAT」。一般乗船者でもあるトラベルライターが、フレッシュな旅のレポートをお届けします。旅の最中にしか書けない「リアルパッセンジャーレポート」をどうぞご覧ください!

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リアルパッセンジャーレポート第一回を書いてくれたはらちゃん こと原田ゆみさんは、大阪生まれ大阪育ちの28歳。高校2年生の時にニュージーランドへ1年間留学したことがきっかけで海外に興味を持ち始め、就職後もロンドン、カンボジア、インド等、定期的に旅をしながら生きてきました。6年半のOL生活の後、関西ベースLCCの客室乗務員に転職。29歳になる今年、「自分の人生このままでいいのか」と悩みの壁にぶつかっている時、ピースボートセンターにて行われたトークイベントに参加したことが全ての始まりでした。このトークイベントがきっかけで、「もっと色んな人、世界、価値観に触れたい」と心の中の声に気づき、会社を退職して乗船を決意。旅に出るなら自分の感じたことを沢山の人に発信していきたいと、パッセンジャーズレポートを送ってくれることになりました。

ピースボートクルーズには、水先案内人と呼ばれるトークゲストがかわるがわる乗船し、テレビやネットには決してのらない、新鮮な生のトークを披露してくれます。はらちゃんが注目した水先案内人は、ジャグリングの世界的パフォーマー ちゃんへん.さん。単独インタビューを敢行し、その生き様に深く切り込んでくれたはらちゃんの記事をお届けします。

好きなことで一番になった「挑戦人」

ピースボートでは水先案内人と呼ばれるジャーナリストやエンターテイナー、作家、NPO活動家など、国内外の各分野の専門家がクルーズの一区間を乗船され、私たち乗船者に講話やワークショップをして下さる。

そのうちのひとり、ジャグリングパフォーマーの“ちゃんへん.”さんに出会った。2002年、ジャグリングを用いてパフォーマンスの世界チャンピオンになった人 だ。

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ちゃんへん.さんは、私たち乗船者に「挑戦人」と題して、自身がジャグリングパフォーマーになるまでのライフヒストリーを話してくれた。約1時間、立ったままでのトーク。話の最初からどんどん引き込まれていき、熱い思いが込められた一言一言に、私は心を鷲掴みにされた。年齢は私より2歳年上とあまり変わらない。それでも、こんなにも熱く、真っ直ぐに思いを伝えられる人がいるんだと驚きを隠せなかった。
ちゃんへん.さんは在日コリアン3世として京都ウトロ地区に生まれた。トークの冒頭では在日コリアンの歴史を語ってくれた。
小学生時代には、在日コリアンであることからいじめにあい、一時はどうやって自殺をしようかと考え心を閉ざしていた時もあったという。そんなある日、度を越したいじめが先生の目に止まり、校長室に呼び出された母が先生たちに向かって啖呵を切った。「なぜいじめがなくならないのか、教えたる!みんな夢がないからや。」驚くちゃんへん.さんと先生たちを前に、母はこう続けた。「素敵な夢を持ってる子はいじめなんかしない。」この言葉が、ちゃんへん.さんにとって希望の光になったという。
中学2年生の時に偶然にもジャグリングに出会い、「初めて人前に立って評価される表現者の存在を知った。」というちゃんへん.さん。この瞬間、彼は小学生時代にひいおばあちゃんが言ってくれた「好きなことで一生懸命頑張って一番になりなさい。」という言葉を思い出した。「ひいおばあちゃんが自分と同じ年齢の時には、生きるのに精一杯で、好きなことを追いかけることなんてできなかった。だからこそ、ひ孫である自分には好きなことをしてほしいと願ってくれている。」ひいおばあちゃんの言葉の重みをかみしめ、この世界で一番になれるように頑張ろうと決意したのだ

ものごとは、肯定からしか生まれない

彼は言う。「好きなことを続ける秘訣は、自分の成長が実感できることを好きになること。成長を実感できるかどうかで、そのことを愛せるか愛せないか変わる。それが自分にとってはジャグリングだった。」と。

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一番になることを決意した日から、好きなことを極め、頂点に上り詰めた。
そんな彼に、自身のパフォーマンスを通して若者に何を伝えたいのかを聞いてみると、彼は物静かにこう言った。

「物事は肯定からしか始まらない。

環境やコンプレックスを言い訳にしないで、

ありのままの自分を受け入れて、

自分の人生に責任を持ち、

自分の意志で人生を開拓して行って欲しい。」

その静けさからは、言葉では表現できない程の目に見えない熱さが伝わってきた。彼自身がこれまでの人生で経験し感じてきたからこそ、心の底からその熱さが溢れ出ているのだろう。
その熱さは、彼が披露してくれたラップにも込められていた。ジャグリングパフォーマーとして活躍する傍ら、ラッパーとしての顔も持つ。15歳でラップに出会い、自身で楽曲を作りCDも出している。
ラップは、黒人差別があった時代、読み書きを奪われた彼らが自身の歴史を残す方法として生まれた音楽だ。この音楽に乗せて、ちゃんへん.さんは社会問題、人種差別、家族への思いを伝えてくれた。その思いの中には、メディアに翻弄される世の中に対し、私たちに物事の内面を見る大切さや、耳や目に入る情報が一面的でしかないということを気づかせてくれるメッセージが込められていた。
世界一周の旅を続ける乗船者として、そして、これから人生を生きていくひとりの人間として、忘れたくない世界の見方だと感じた。

船上生活は、違う価値観を入れる時間

ちゃんへん.さんにとって、ピースボートクルーズでの船上生活は「特殊な空間であり、新しい刺激を吸収し、違う価値観を入れるための時間」だと言う。

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私にとってはまさに彼との出会いが新たな刺激であり、違う価値観に触れられた時間だった。
この船に乗船し、地球一周のために自分のキャリアを一旦置いて乗船してきた若者や、今後どのように生きていきたいか考えている学生にも多く出会った。
そんな人たちにとって、彼のメッセージ、生き方は、船を降りてからの人生の教訓になるのではないだろうか。少なくとも私にとっては、自分を振り返り、自分の人生に覚悟を決めて進んでいこうと思い直させてくれるきっかけとなった。

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「乗る前の風景と乗った後の風景が変わっていて欲しい」と話すちゃんへん.さん。この言葉を心に留めて、私は自分の船旅を続けていこうと思う。船旅を終えた自分が、乗る前の自分と変われるように。
(取材・文/原田ゆみ 編集/浅倉彩 写真提供/原田ゆみ 写真/PEACEBOAT、Kajiura Takashi)

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