道端に山と積まれた色鮮やかなフルーツや、見たこともない姿形の魚たち。真剣な表情で下処理の包丁を入れる横顔や、昼からビールが入ったとびきりの笑顔。
食の原風景が残された場所に飛び込み、ふと差し出されたものを手から手に受け取って口にすれば、心まで満たされる、その土地の“まるごと”が味わえます。
ピースボート第93回クルーズで見つけた、土地を味わうローカルフードを前編・後編の2回にわたってお届けします。
食の原風景が残された場所に飛び込み、ふと差し出されたものを手から手に受け取って口にすれば、心まで満たされる、その土地の“まるごと”が味わえます。
ピースボート第93回クルーズで見つけた、土地を味わうローカルフードを前編・後編の2回にわたってお届けします。
上海 飲茶とスープ
日本でも見慣れた飲茶ですが、上海の道端で大きな丸い鉄板でジュージュー焼かれる餃子を見かけた日には、本場の迫力を感じざるをえません。地元の人々が、気軽な感じでホカホカ飲茶をお持ち帰りしていました。こんなお店が家や職場の近くにあったら、週に3日は通ってしまいそう。
こちらは日本で見たことのない業態のスープ屋さん。生の状態の食材をビュッフェ形式で選び、オーダーメイドの具沢山スープに仕上げてくれる食堂です。並んだ食材の中にカエルの足を見つけ、旅情が高まりました。
モーリシャス カレーとチャツネ
インド洋に浮かぶモーリシャスは、かつてインド人商人の貿易中継地だった島。フランス・イギリスの植民地だった時代には、労働力としてアフリカ系や中華系の人々が連れてこられた歴史があり、今では多様な民族が共存して暮らしています。
このモーリシャスでランチにいただいたおもてなし料理は、ほぼインド料理でした。アジアを遠く離れ、もうすぐアフリカのはずなのに。シンガポールから10日間かけてたどり着いた距離感とのギャップから、インド料理の伝播力に驚きました。
市場でスパイスが売られている様子も、まるでインド。
数種類のチャツネをカレーと混ぜていただきます。左下のピクルスは、チャルダと呼ばれていました。アチャールがなまったのでしょうか。
こちらはスモークフィッシュのサラダ。スモークフィッシュがあまりに美味しかったので名前を尋ねると、「これはマルランだ」と。Marlin、つまりマカジキでした。
ランチをいただいたのは、古い洋館を改装したレストラン。熱帯の森の中にひっそり佇んでいます。
インテリアは中国風と洋風の調度品がミックスされていて、小さな島の長い歴史を感じさせます。
レユニオン島 チキンマサラ・サモサ・ファラフェル
モーリシャス寄港から一晩でレユニオン島に到着。この二島は、地図で見るとマダガスカルの東に仲良くならんで双子のような趣ですが、モーリシャスがモーリシャス共和国という国(イギリス連邦加盟国)であるのにたいして、レユニオン島はフランスの海外県です。
カリブ海でも、隣り合う島同士で、キューバではスペイン語、ジャマイカでは英語、ハイチはフランス語と違う言語が話されており、大国のパワーロジックに翻弄されてきた小さな島の宿命を感じます。
でも、代表的な料理はやっぱりカレー。料理を教えてくれた地元の人にとっては、これはインド料理ではなくクレオール(混血)料理とのこと。カレーは「混ぜて食べる」という意味の言葉で、鍋いっぱいに煮込まれたカレーに見える料理の呼び名は「チキンマサラ」でした。
中東の料理であるファラフェルを、本来使われるひよこ豆ではない豆でつくるあたりは、確かにクレオール(混血)な様子。「クレオール」は沖縄の「チャンプルー」と近いニュアンスでしょうか。サモサも、ふつうは具材とスパイスだけだと思いますが、クレオール料理ではフレッシュハーブをたっぷりと。
バナナの素揚げは、南の島ならでは。
足まで豪快に煮込まれたチキンマサラ。珍しいので真っ先に足を食べようとしたら、「チキンの足を食べるとbeautiful child&husbandがやってくるよ」と教えてくれました。
レユニオン島では、クレオール料理体験のオプショナルツアーに参加しました。お料理体験の前に訪れた市場は、清潔で素晴らしいみずみずしさ。地元の新鮮な食材と海を超えてやってきた多彩な料理方法がかけあわさった豊かな食体験を約束してくれるレユニオン島は、食いしんぼうにぴったりの旅先かもしれません。
マダガスカル ラヴィトトとセブ牛のステーキ
マダガスカルの道端で出会ったのは、ラヴィトトという豚肉をキャッサバの葉と煮込んだごはんです。草っぽい見た目を裏切らない草っぽい味でした(笑)食物繊維たっぷりで、体に良さそう。
こちらは背中にこぶのあるセブ牛のステーキ。柔らかくジューシーで、たいへん美味しかったです。
道端で見つけた、トタンのレストランでいただきました。
チリ・バルパライソ 鉄板焼きチーズ&牛肉サンド
チリ・バルパライソの市場の角っこで、チーズと牛肉をジュージュー焼いていい香りを漂わせているワゴンを見つけました。
市場の買い物客がサンドイッチ片手に腰をおろし、休憩しては去っていく。これぞ、ストリートフード。
バルパライソの市場は活気と彩りにあふれて、みんな気さく。写真散歩が楽しい場所でした。
チリ・バルパライソ ムール貝のスープ
バルパライソのmetroの終着駅「Puerto」駅前の道端で食されていたこちらの食べもの。
スープらしき液体にひたひたに浸かった大量のムール貝のみ。究極にシンプルな、これはおやつでしょうか。
前編はここまで。モーリシャス共和国〜チリ・バルパライソまでをご紹介しました。後半は、チリ・プンタアレナス〜タヒチのローカルフードをお届けします。どうぞお楽しみに!
(取材・文・写真/浅倉彩)