レポート
REPORT Vol.012
2017/01/10
初めての上海で、適当に歩いたらいろいろびっくりした話【ピースボートの旅ブログ】
ピースボート第93回クルーズは、南半球を船でめぐる世界一周の旅。本シリーズ「ピースボートの旅ブログ」では、仲間とともに船上生活や寄港地トリップを楽しんでいる真っ最中のパッセンジャーが、世界に飛び込み、自分の目で見て、こころで感じたあれこれを綴ります。
今回ブログを書いてくれたのは、「まつり」こと祭灯俊龍さんと「なってぃ」こと草野夏希さんです。
なってぃは、小学校の先生志望の22歳。オーストラリアへの語学留学で、ホームステイ先の家族のあり方から「それまで知らなかった幸せのかたち」を知りました。将来、子ども達が自分なりの幸せを見つけられるように導ける先生になるために、価値観や視野をもっと広げたい!とピースボートに乗船しています。
まつりは航空機の整備士の仕事を退職し、「この1年はとにかく海外に行きたい」という最初の旅にピースボートクルーズを選びました。やりたいこと基準でお金を稼ぐライフスタイルを目指し、第93回クルーズではやりたいことのひとつでもある「文章を書くこと」にチャレンジしています。
ピースボート第93回クルーズの最初の寄港地は上海。「まつり」グループと「なってぃ」グループは、それぞれのルートで街歩きをした。上海で観光したかったものは、中国の雰囲気を感じられる建物がならぶ街。だけど、実際歩いてみると、もともと想定していたのとは、違うものにばかり心惹かれてしまった。
最初に訪れた豫園老街(ユーユェンシャンチャン)では逆立ちした狛犬がお出迎えしてくれた。
日本でもおなじみの狛犬だが、こちらは芸達者。躍動感あふれる姿に、これから始まる旅のワクワク感が高まる。
他にも豫園境内では狛犬の親子が毬で遊んでいる像もあり、温かい気持ちになった。
次に目を惹かれたのは、体と角が鹿で、頭が龍のなんとも不思議な銅像だった。はじめ狛犬かと思ったが、違う。豫園老街に連なるお店入り口のあちらこちらで見られた。見たことのない異形ぶりに、毎回2度見。
船に帰ってから、この銅像が一体なんだったのかを水先案内人(※)として乗船されていたモウバンフさんに聞いてみた。モウさんは、上海育ち・日本在住の国際ジャーナリストだ。
※水先案内人とは、ピースボートクルーズの船上でトークイベントやライブなどを行うために乗船される専門家やアーティストのこと。
モウさんによると・・・龍は本来、皇族にしか扱うことが許されていなかった霊獣で、一般人はもちろん、位の低い貴族でも、龍をかたどったものを持つことはできなかった。
しかし、それでも龍によって地位を誇示したい貴族たちは、動物の一部を龍のように変えたり、龍の指の数を1本減らしたりして、役人に龍と疑われた時に言い逃れできるようにして、所有した。「いやいや龍ではないですよ!だってほら鹿の体をした龍なんて見たことないでしょう?」と言い、罰せられずに済むようにしていたそうだ。
豫園では、ショップの店頭でキモかわいいオブジェをよく見かけた。
上半身裸で笑っている子どもやストリート系の仏像は、何ともいえない表情をしていて見るだけで脱力して失笑してしまった。キモかわブームが豫園にも来ているのか!?
せっかくなので本気でふざけてみた。シュールな写真を撮るならここで決まり!
豫園をまわったあと、七宝(チーバオ)に移動。七宝駅を出てすぐ、ショッピングセンターの目の前に鎮座する、モニュメントに一瞬で目を奪われた。
隣り合ってお客さんを迎えるのは黄金に輝くティラノサウルスとクリスマスツリー!!!どういう取り合わせ?中国だけあってやること成すことBIGすぎる。。。
今にも動き出しそうな躍動感!なぜか金ピカ。
想像していた中国と違うヨーロッパ風の街並みをはじめ、とてもおしゃれできらびやかな景色も印象に残った。
アートストリート田子坊(ティェンヅファン)
豫園から川の方へ向かうと見られる街並み
上海ではトイレ事情にも圧倒された。入ったトイレすべての個室に鍵がついてなかったのだ。本来なら鍵がつくはずのところにはなにもなく、ただ穴が空いているだけ。どうすれば用を足していることを知らせられるのか…考えた私たちは1つの答えにたどり着いた。用を足している間、その穴から指を出しておく作戦(笑)。さすがに友達がやっているのを見た時には爆笑してしまった!!!後で現地の人を見ていると、扉を閉めた時点で人がいるというサインらしく、何も心配することはなかったのだった。
現地の若い男性から一番のおすすめと聞いて向かった豫園のフードコート。ビュッフェスタイルで、料理を取ってからレジで会計して食べる。
ワンタンや春巻き、点心など見た目はどれもおいしそうな料理だが食べてびっくり!
ぜんぶ、冷たい・・・残念!
もし温かかったらおいしいんだろうな~と思いながらお腹におさめた。
なかでも不思議だったのが写真の手前に映っているおこわと左端の茶色い料理。おこわは、ピーナツの殻を蒸したような味で全く箸が進まず。
茶色い料理は、見た目はレンコンの穴にモチ米を詰めて醤油で煮込んだ感じだが食べると干したサツマイモを水で戻したような味と食感がして頭の中が???でいっぱいになった。
豫園では屋台のようなお店もいっぱい見かけた。そしてなってぃは、うずらの丸焼きを食らった。値段は10元(日本円で約160円)。人生で初めての挑戦だ。
調理方法は…これをただ揚げるだけ。笑
味はチキンに塩コショウをふっただけのシンプルかつ美味しいものだったが、食感は私が食べてきたどの肉よりもブニブニ。心なしか生きていた感じが伝わってきた。
世界遺産となっている街“蘇州(スウヂョウ)”に行く時間がとれなかったため、似た風景がないか探して見つけた“七宝“。水路を挟んで両側に建物が並び、そこを小船が通っていく。
水路側にも玄関があるのが印象的。ここにもたくさんの不思議グルメがあった。
七宝老街のグルメストリートを歩いていたら大量のうずらの卵の山を発見。よく見ると塩の山の内側にうずらの卵が張り付いていたり、鶏の卵らしきものもちょこっと混ざっているのが気になった。帰りに買おうと思って忘れてしまったのが残念。卵にちゃんと味が付いているのか確かめたかった。
ひとパックに入っている量もすごい。
飲茶のようないでたちで、いろんな動物の顔が描かれた饅頭が売られていた。色のバリエーションも豊富で、原宿を連想させるようなとってもユニークな食べ物。
試しに食べた友達いわく味はイマイチと教えてくれたので食べなかったが、旅先でおいしいものに出会う難しさを知った。
中国ではポピュラーな餡入り白玉。中国人の両親を持つまつりの家ではよくつくられていて、落花生の粉と砂糖を練った餡が入っている。
カウンターで食べたい具材を決めて店員さんに注文すると、色んな餡の白玉がぎっしりと浮かんでいる1つの大きな鍋の中から、おたまで1玉1玉お椀に移してくれる。
注文した餡は、あんこ、落花生、春菊、豚肉。
見た目は全部一緒なのに、店員さんはどうやって中身を判断しているんだろう?
七宝老街で歩いていると、別の4人組の友達グループと遭遇。会って早々「ねぇ、聞いて聞いて!やばい!だまされた~」とマシンガントークがスタート。
詳しく話を聞いてみると・・・
写真1枚10元(17円)と看板を出しているコスプレ写真館に入り、メイクしてもらって衣装に着替えたところから全ては始まった。ポーズ毎にいつ終わるのか分らないほど大量に撮り、気に入ったほうを選んでいくというスタイル。
すると、すごい枚数が現像済みとなり、勝手に現像されたので要らないと言ったが聞き入れてもらえず最終的に4人で合計20,000円近く支払う羽目に。笑
右端の友達は所持金残り8元に(日本円で約136円)、だけどなぜかドヤ顔
写真の仕上がりは完璧
ぼったくられたプロ4人(上)と僕ら素人3人(下)で手と顔の角度が面白いくらい全然違う。笑
近代的な高層ビルとスラムっぽいエリアが入り混じっている上海でこれぞ中国、という雰囲気を感じた豫園。漆喰の壁に朱塗りの枠組み。そこにバンッと反りあがる屋根というデザインが中国に来たのだと感じさせる。
豫園寺院の境内にある池では、縁起物とされる鮮やかな赤いコイの群れが泳いでいた。周りの木々や岩の趣と相まって、幻想的だった。
PB(ピースボート)をやってみた
建物どうしをつなぐ渡り廊下は、初めからこの造形なのかは定かではないけど、うねり方がまるで龍のようでかっこいい。
豫園では、大きな建物の1階部分に屋台やお土産屋さんなどが多く並んでいる。しかしふと目線を上げてみると、その建物の2階より上の部分にはとてもきれいとは言えない生活スペースもあった。
また、豫園の街を歩いていると、お金を要求してくる、いわゆる物乞いの老人が何人も声をかけてきた。中国だけに限らないことだとは思うが、自分がどう対応すべきだったのか、またその現状についてもっと自分も知るべきではないかと考えさせられた。
上海は地下鉄が異常に安かった。1時間かかる距離でもたったの5元(85円)しかかからず、仮に1日フリーパスを買っても18元(144円)。また、近代的というべきか、改札口を通る際にはランダムにX線で手荷物検査される。
寄港する前日のお昼に観光ガイドブックを読むまで、東京みたいな近代ビルが並ぶ都市を想像していて、行っても買い物ばかりで観光するものはないんじゃないかと思っていた上海。
しかし実際に上海を歩いてみると1日じゃ足りないくらい観光したくなる場所が多かったし、売っているグッズや食べもののインパクトに驚かされっぱなしだった。(トイレも!)
初めの上海のイメージとのギャップにいい意味で裏切られた1日だった。
(取材・文・写真/祭灯俊龍・草野夏希 編集/浅倉彩)